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民間企業ではありえない、校長先生と一般教員の不思議な力関係

【ゆとりからアクティブ・ラーニングまで】教育改革の9割が間違い 第5回

◆同じ学校にいても脳内の構造がまったく違う

 行政は国家権力の一部であり、議会を通じて国民の意思が反映されている。そしてまた、地方議会のコントロールも受けている。

 管理職たちは、並の教師より自分が立場的にえらいということより、国民・住民の意思を代弁しているということによって、教師たちを総体的に管理・統制・指導する権限があると考えている。

 ここがふつうの教師の納得できないところだ。教師には、学問は独立しているという観念がある。真理は多数決だと思っていない。政治に学問は統制できないと考えている。

 管理職が立場上えらいというのなら、多くの教師はそれほど反発も反対もしないだろう。

 だがそもそも管理職は、頭と言葉の構造が教師とは異なっている。法律、条例、教育委員会からの指示を最優先する。

 学校をどうするか、生徒をどう育成していくか、教師たちの要望にどう応えるかは二の次である。管理職たちの頭は法制的に構成されており、教育言語でも生活言語でもない行政用語を話す。

 私は教務主任を三年やり、管理職と一般教員の折り合いをつける役割もしたが、どうしても行政の文書が頭と心に入ってこなかった。とにかく、学校で生活する際の言葉の世界と行政文書の言葉の世界は、まったく違うものなのである。

 あれだけ強固な行政文書の世界を生き伸びるためには、学校の現実とはかなり離れた世界に住んでいなければならない。だから、教務主任をやっているときは、管理職と教師の異なる世界が隔絶しないように、バランスを取ったわけである。

 面白いことに、教師との言語や感覚の誤差を承知している管理職は、びっくりするほど教師たちとの関係を大切にする。とにかく、上司と部下ではない。他県はいざ知らず私の居た埼玉県では、校長たちはどんな教師にもとても丁寧に応対するのである。

『教育改革の9割が間違い』より構成>

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~プロフィール~

1941年千葉県生まれ。「プロ教師の会」名誉会長。作家。東京教育大学文学部卒業。埼玉県立川越女子高校教諭を2001年3月に定年退職。「プロ教師の会」は、80年代後半に反響を呼んだ『ザ・中学教師』シリーズ(宝島社)をはじめとして、長年にわたり教育分野で問題提起を続けている。著書に『なぜ勉強させるのか?』『間違いだらけの教育論』(以上、光文社新書)、『オレ様化する子どもたち』『「プロ教師」の流儀』(以上、中公新書ラクレ)など。


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